100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる


「ティアナ様!!」

ハーディスの声はどの時点で聞こえたのか覚えていない。
私の背中にはもの凄く熱い痛みが走り、そのまま倒れ込んだ。目の前にいるエリス様が目を見開いていたが、何故か彼女の口角が上がったように見えたのは気のせいだったろうか。

「ティアナ様!ティアナ様!!」

私を抱きしめハーディスが何度も私の名前を呼ぶ。
視界の端に、鎌を持った男が取り押さえられているのが見えてホッとした。

「何故あんな女を助けようなどと」

怒りに震えるその声に、私も何でかなとぼんやり思う。
ただ身体が動いただけ。
理由は特に浮かばない。

自分の感覚が痛みが勝っているのか寒いのかわからないが消えていくのがわかる。

「ハーディス・・・・・・」

普通に呼びたかったのに声はとてもか細かった。
私を抱きしめ、見下ろすハーディスの顔が怯えたように青ざめている。
こんな顔を見たのは初めてだ。

「この世界は貴女の望んだものだったのに!
愛する貴女がいないのなら、この世界など」

あぁ、ハーディスよく聞こえないわ。
どんどん目に見えるこの世界が暗くなって寒いのよ。
そうね、温かい紅茶が飲みたいわ。

なんで、こんな時まで私はあの執事のことを考えているのだろう。
多分、私は笑っていたような気がする。

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