100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる


「あの後私のいた世界はどうなったの?」

「終わった」

「いやそれは私の人生であって、ハーディス達がどうなったかということを」

「言っただろう、あの世界は終わった。
ハーディスは我と近い力が使える。
101回目の転生を楽しませるはずが、余計な女の妨害でお前は死んだ。
意味の無くなった世界をハーディスは消去したのだよ。
一番消したかった女はその前に逃げてしまったが」

「その女って」

「エリスだ。あれは争いを好む神。
我と、そしてハーディスすらお前に執着したことがたいそう面白くなかったらしい。
うるさいのでこちらに来られないよう罰を与えたのだが、まさか裏を掻いてお前の世界に行って邪魔をするとは思わなかった」

「待って。
じゃぁエリス様は神で、ハーディスは私の死に関係してあの世界を消したってこと?
お母様達は?ディオンとカール様達は!?」

「言ったであろう、消去したと。
無くなったのではなく、消えたのだ。
そもそも存在していない世界という扱いになったので死者も来ないで済む」

口が少し開いたまま状況が飲み込めない。

「それって、誰も転生出来ないって事?」

「そういうことだ」

簡単に言い切られ、私はそのままの体勢で彼の腕を掴む。

「冗談じゃ無いわよ!みんなあの世界で生きてて、終わればまた違う世界にいけたはずが訳わからない神様の介入で不可能になるなんて納得出来るわけが無い!
そもそも貴方はどれだけ元凶を作ってるのよ!
今回も貴方が彼女を怒らせたことでこんなことに!」

ふと思い出した。
エリス様を庇ったとき、彼女の口は笑っているように見えた。

彼女の目的は私への嫌がらせ。
101回目の転生を早期に終わらせ、大切な人達の世界を消し、何よりそう行動させてしまったのはハーディスということ。

彼女は私に大切な者達を消し去ることに成功し、大切なハーディスにも苦しみを与えたのだ。

「泣くな」

そっと指が自分の頬にあたる。
それで頬に涙が伝わっていることに気付いた。

「お願い。あの世界の人達を戻して。
私はもうここでいい。ここで一緒に過ごすから。
ただハーディスがそういう事をして消し去ったなんて辛すぎる」

俯くと、大きな手が私の頭に置かれた。

< 97 / 102 >

この作品をシェア

pagetop