100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「お前は100回も生贄として殺されたのに、いつも泣くのは他の者のためだった。
いつもそれを見てはなんとも言えぬ気持ちになっていたが、実際目の前で見ると比べものにならぬ」
ハデスは言いながらも戸惑っているように思えた。
ずっと私の死を100回、いや101回見届けた人。
この人だって私のわからない思いがあるのだろう。
だけれど今会いたいのは一人だけだ。
優しいディオンでもなく、真面目なカール様でもなく、いつも側にいてくれたあの胡散臭い笑みを浮かべる執事の事を。
「ハーディスに会いたい。
あんな事をさせずにハーディスの望む幸せを手にして欲しかった」
段々言葉に詰まってきて、言い終わると同時に頭に置かれた手が引っ張って私は硬い胸板に当たる。鼻が痛い。
「泣くな。
・・・・・・仕方が無い、原因でもあるあの女に始末をさせよう」
ハデスにゆっくりと身体を起こされ、ハデスが指を鳴らす。
しばらくして向こうから女性の喚く声が聞こえた。
「ちょっとー!突然なんなのよ!!」
そこに現れたのは、ロープのような太い紐で身体をぐるぐる巻きにされた女性。
気の強そうなつり目に真っ赤なドレス。
顔は違うし年齢も上だと思うが、すぐにあのエリス様だと気付いた。
「エリス、また諍いを起こした罪は重いぞ」
「趣味なんですぅー」
ハデスの言葉にエリス様はわざとらしい語尾の伸ばしか下をしてつん、と顔を背ける。
なお、こちらは大きなベッドの上で二人で座っていて、エリス様は何人もの屈強な男達に身体を縛っている紐を握られている。
「我が妻への愚行、それ相応の罪は償って貰う」
「なによ、私のおかげであの小娘の世界が終わって妻に迎えられてるのよ?
感謝こそされてもそこまで言われる筋合いは無いわ」
「確かに我は早く妻を迎えたかった。
だが最後の願いは叶えたいと思うくらいに待ち続けた相手だ。
その願いを踏み弄っておいて自分のおかげだとよく言えるな」
「格好つけちゃって。ずっともう攫おうかと愚痴ってたくせに」
それは何となく聞き覚えがある気がした。
いまいち思い出せないのでハデスをのぞき見れば、目が合った後顔を逸らされた。
恐らく事実なのだろう。