海とキミのオムライス
1 海
小宮葵(こみやあおい)24才、本日失恋しました。
19才の頃から5年付き合った恋人だった。
大学と短大の合同サークルで知り合って、意気投合した。
恋人の瀬良(せら)くんがいたから、バイトも勉強も頑張れた。
短大を卒業して就職してからは、休みに会うのが私の楽しみで、生きる理由だった。

夜に呼ばれたら、眠りたくてもかけつけた。
嫌われたくなかった。とても好きだった。
幸せで、いたかった。

今日、久々に会えるのだと浮足立って出かけた先で、フラれた。
「ごめん。一人に戻って、自由になりたいんだ」
(何それ、何それ、何それ。私といるのはそんなにきゅーくつだったの。私との5年は何だったの!!)
(まだ、好きな人ができたとかの方が納得できるし!!!)

瀬良くんと別れたあと、街をさまよい歩いた。
木枯らしが吹き、落ち葉が舞っている。
デートだと、楽しみにおろしたパンプスで足は痛みを訴えていた。
(ブーツにすればよかった…)
歩き疲れた頃、ふと目についた駅で最初にホームに入ってきた電車に乗った。
改札でICカードの残額を確かめ、払えるギリギリまで乗ろうと思った。
何処か遠くへ行きたかった。
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