海とキミのオムライス
風太は、私が行ったことないと言った場所、つまりは瀬良くんと一緒に出かけたことがなかった遊園地など定番の遊び場を一通り経験させてくれた。
まだ寒い季節だったので、野外で遊ぶ時は時おり木枯らしに吹かれたが、その分人も少なく思う存分楽しめた。
水族館では、私がずっと眺めていたシャチのぬいぐるみを笑いながら買ってくれた。
「楽しいね、葵さん」
屈託のない笑顔を風太に向けられると、いつも癒やされた。

閉店後のハレルヤでも色んな話をした。
好きなもの、嫌いなもの、笑い話、初恋の話、小さい頃の話、家族の話。
真面目な話もした。
風太は日本、海外に関わらず、子供の貧困問題に興味を持っているようで、真剣な顔で世界と日本の状況を説明してくれた。
半分くらいは、難しくてよくわからなくて、風太に合わせてマジメな顔をして相槌をうっていた。
けれど、自分がいかに恵まれた中で生きてきたのかが身にしみてわかった。
そして、風太の命というものへの強い思いが伝わってきた。
初めてあった時の「ばかやろう」という言葉を思い出し、その言葉に込められた思いを知った気がした。
同時に、私も何か、何かに真摯に打ち込める何かが欲しいと強く思った。
「どうしたの?葵さん」
考え込んでいたらしい私を、風太が心配そうに覗き込む。
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