海とキミのオムライス
5 新しい私
肌寒い時期が終わりを告げ、春の息吹が感じられるようになってきた頃。
風太からサークルの行事のため、しばらく会えないという連絡がきた。
「そっか……」
スマホをスタンドに立てかけたまま指でゆらゆらと揺らす。
(会えないのか……)
急にスケジュールが空いた日曜日を何に使おうと思い巡らす。
この頃は、風太と遊ぶだけではなく、一人で行動することにも慣れてきていた。
何かもう一歩前へ踏み出したい気持ちになってくる。
(もう、いつも瀬良くんに合わせてばっかの私じゃないんだ。)
(風太と居ない日も、ちゃんと楽しめる人間でいなくちゃ……)
ふと、貧困問題について熱く語る風太の姿を思い出した。
(私に、何が出来るだろう)
“お前は何もできないんだから、オレの言うことを聞いていればいいんだよ”
瀬良くんに言い続けられてきた言葉が頭を回る。
その言葉を打ち消すように頭を振って、記憶を追い払う。
白いベッドにもたれかかりながら部屋をぐるりと見回す。
(私が好きなものがいっぱい……。)

(そうだ。何が、どう好きなのか考えてみよう!)
それは、唐突な思いつきだった。
けれど、我ながらいい案だと思い、メモ用紙とペンを取る。
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