海とキミのオムライス
その週は仕事でミスを連発し、同僚に叱責まじりの心配をされた。
「小宮さんらしくないよ」
「すみません」
失敗のリカバリーのためいつもより残業時間も長くなり、金曜日にはぐったりしてしまった。
こんな状態で明日は瀬良くんに会わないといけないのだ。
いつもの彼の強引さを考えると、ただただ憂鬱になった。
何をどう考えてもなかなか寝付けなかった。

普段のように眠れなくても、いつの間にか朝はやってきて新しい一日の始まりを告げる。
先週までとは違う、気の重い土曜日の始まりだった。

のそのそとベッドから起き出し、クローゼットの中を見回した。
端から端まで眺めて、瀬良くんと別れてから買った、襟に飾りの付いたベージュのワンピースを手に取った。
てろんとした生地とベージュの色合いが気に入って買い求めたものだった。

待ち合わせの１０分前に着くと、瀬良くんは何故か既に着いていて、開口一番「遅い」と怒られた。
ぐっと言いたいことを飲み込み、瀬良くんの値踏みするような視線に耐える。
付き合って居た頃には着たことがない雰囲気の服装だったからだろう。
瀬良くんの好みではなかったはずだ。
「そういう格好も悪くないんじゃない」
そう言われて、身構えていた体の力が抜けた。
「葵」
思った以上に優しく呼びかけられて、小さく「何」と返した。
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