海とキミのオムライス
あの冬の日に偶然降りたその駅は、もうずいぶんと馴染みのある場所になっていた。
ザザン、と波の打ち寄せる音が耳に心地良い。
砂浜に遊びに来ている人もまばらに見えた。
準備中であるはずのハレルヤへ向かう。
扉には“臨時休業”の看板がかけられていた。
(え?今日お休み?健吾さんか風太に何かあったの?)
慌てて扉に手をかけると、鍵はかけられていなかったようですんなりと開いた。
なじみのあるケチャップのにおいに迎えられる。
「健吾さん?風太?」
その瞬間、左右でパンと何かが鳴った。
キラキラのテープが服に降りかかる。
クラッカーだと気づくのに数秒を要した。
(何?)
そこにはにこにこした顔の健吾さんと、憮然とした表情の風太が居た。
先に口を開いたのは健吾さんだった。
「おめでとう、葵ちゃん。復縁したって、聞いたよ。彼とうまくいったんだね」
あの冬を知っているからだろう。
どれだけ私が瀬良くんを好きだと、大泣きしたか。
訂正しようと口を開きかけた時、風太がおずおずと近付いてきて、うつむきながら私の手を取った。
そして、意を決したように顔を上げる。
目が合った。
「葵さんが幸せならそれでいいよ」
泣きそうな笑顔だった。
「オレの幸せは、葵さんが幸せになることだから」
こんな顔をさせたいわけじゃない。
ザザン、と波の打ち寄せる音が耳に心地良い。
砂浜に遊びに来ている人もまばらに見えた。
準備中であるはずのハレルヤへ向かう。
扉には“臨時休業”の看板がかけられていた。
(え?今日お休み?健吾さんか風太に何かあったの?)
慌てて扉に手をかけると、鍵はかけられていなかったようですんなりと開いた。
なじみのあるケチャップのにおいに迎えられる。
「健吾さん?風太?」
その瞬間、左右でパンと何かが鳴った。
キラキラのテープが服に降りかかる。
クラッカーだと気づくのに数秒を要した。
(何?)
そこにはにこにこした顔の健吾さんと、憮然とした表情の風太が居た。
先に口を開いたのは健吾さんだった。
「おめでとう、葵ちゃん。復縁したって、聞いたよ。彼とうまくいったんだね」
あの冬を知っているからだろう。
どれだけ私が瀬良くんを好きだと、大泣きしたか。
訂正しようと口を開きかけた時、風太がおずおずと近付いてきて、うつむきながら私の手を取った。
そして、意を決したように顔を上げる。
目が合った。
「葵さんが幸せならそれでいいよ」
泣きそうな笑顔だった。
「オレの幸せは、葵さんが幸せになることだから」
こんな顔をさせたいわけじゃない。