彩りの日々
「兄貴に告んなかったんだ」

突然の話題転換にギクッと私は持っていた雑誌を手から落としてしまった。

この話題はあまりしたくない。したところで不毛だから。

私は私なりに自分の恋心に蓋をするということをかずくんに片想いをしているこの長い年月で覚えたし、自分なりに現状に満足するようにしている。

自分の中ではもうとっくに結論を出している事柄なので蒸し返さないでほしい。

「……言わないよ。言わないって決めてるし、これでいいの」

「なんで言わないわけ?」

「何でもいいでしょ」

もうこの話題はおしまいだと打ち切ってしまいたかったけど、無言でジッとこちらを見つめるしょうちゃんの圧がすごい。
「言え」と言っているのがわかる。



「だ、だって……二歳って、結構大きな壁なんだよ」

「……あ?」

「かずくんは私のこと妹としか見てくれてないし。たったの二歳でも結構年の差は大きいっていうかさ。別にいいの。……かずくんと仲良しの幼馴染でいられるなら。平凡平穏な私の日々はその少しの彩りで生きて行けるの」

俯いて、こんな情けないことを言うのは自分でも馬鹿げているとは思うけど

「バッカじゃねーの」

案の定、しょうちゃんには鼻で笑われた。
その小憎たらしさに思わず



「バカって言った方がバカなんだよ!」


なんて私のほうが子供じみた反論をしてしまう
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