彩りの日々
確かに改めてみると私の頭一つぶん以上、しょうちゃんのほうが背が大きい。

「大きくなって増々かずくんに似てきたね。かずくんも背大きいし。いいなあ私ももうちょっと身長ほしかったなあ」

「……そんなに似てねえだろ」

一気にしょうちゃんの声のトーンが暗くなる。

(あれ?……昔はお兄ちゃんみたいになりたいって言ってたのに)

お兄ちゃんっ子だったしょうちゃんはいつも口癖のようにかずくんのようになると言っていた。
だから私としては褒め言葉のつもりだったのだが。

その反応が芳しくなくて、内心で首を傾げた。

(やっぱり難しいお年頃なのかな)

しばらく不機嫌になったようなしょうちゃんは黙り込んでいたが、作業が終わると、ぽつりと

「……俺、そんなに兄貴に似てる?」

と、尋ねてきた。

「え、……」

表情からはしょうちゃんが何を考えているのかわからなかった。

無表情のまま、まっすぐに私を見つめていた。

だから正直私はどう答えるのが正解なのかはわからなかった。
小さい頃のように似ているよと言ってもいいのか、今の少し反抗期なしょうちゃんは他の言葉がほしいのか。

「……まあ、……似てる、かな? ほ、ほら、兄弟だし……?」

あやふやな感じではぐらかそうと思ったけど、なんだかとんちんかんな回答になっていたかもしれない。

「……そっか」

「う、うん」

どことなく沈んだようなしょうちゃんにそれ以上何か言うのも憚られて、私はただ静かにしょうちゃんが何か話すのを待っていたが、

「さっさと買い物行くぞ」

と、しょうちゃんがこの話を終えたので特にそれ以上は気にすることをやめた。

時々こういうしょうちゃんの難しいお年頃のせいで悩みはするものの、かねがね二人の関係は順調だと私は思っていた。

ちょっと反抗期の弟(のような幼馴染)とも一応仲良く接することが出来るのだと。


そう呑気に考えていた私は、自分がいかに鈍感なのかということにすら気づいていなかった。
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