彩りの日々
さすがに酷い姿を晒してしまったと申しわけなくなり、その羞恥から慌てて言い訳を並べ立てる。

「い、いや、でもまあほら、私なんかの見ても、ね!? もうそんな恥じらうような歳でもないし、……!! それにほら、しょうちゃんとは姉弟みたいなもんだし! 今更恥ずかしがってもさ……!!」

恥ずかしがると余計に恥ずかしくなるからと開き直って見せようとした私だったが、余計に墓穴を掘っているような気がする。

「……い、……」

「え? なに?」

ぼそりと呟くしょうちゃんの声が上手く聞き取れず、私は思わず聞き返す。

唇を噛みしめた悔しそうなしょうちゃんの顔。

私の手をぐいとしょうちゃんの手が乱暴に引く。
突然、よろけた体を抱き締められた。



「……え?」



何が起きたのかと脳が理解するまでにしばしの間があった。



力強いしょうちゃんの腕が私の背を抱き寄せて、至近距離から見下ろすしょうちゃんの真剣な瞳とかち合う。

「弟じゃない」

「……しょうちゃん?」

目が離せないと思った。

力強くまっすぐにこちらを見つめる瞳はどこか真剣すぎて怖いほどなのに、濡れた前髪が額に張り付いて滴を垂らし、それがどこか寂しそうな濡れた子犬のようにも見えて、放っておけないような気持ちにさせる。


これは、誰だろう?


私の知らない男の人のようだった。
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