彩りの日々
ドキドキなる心臓と混乱する頭で泣きそうになる。

知らない人みたいで、しょうちゃんのことを怖いとすら思ってしまった。

しょうちゃんはまだ未成年で、私と十も歳が離れていて、それに私はかずくんのことが好きで。
今こんなことをしていていいはずがない。

「しょうちゃん、……やめ、て、……!」

口からついて出たのはまるで拒絶のような言葉だった。

私が自分の言葉にハッとしてしょうちゃんを見つめると、しょうちゃんも傷ついたような顔をしていた。
しょうちゃんの真っ黒な瞳がうろうろと彷徨って、どこか泣きそうに見えた。

「ごめん、……」

私を解放したしょうちゃんはそのまま走って家を飛び出した。





まだ窓を滝のような雨が容赦なく叩いている音が聞こえる。

追いかけなくては、と思うのに、体から力が抜けて動けない。
床にへたりこんだまま、先程の出来事をただただ反芻する。

こんな雨の中、どんな想いでしょうちゃんは走っているのだろうか。
引き止めればよかった。
しょうちゃんが心配だし、どうしてそのまま行かせてしまったのかと思うけど、今の私には何がしょうちゃんにとって正しい行動なのかが何もわからない。

弟だと思っていたしょうちゃんのことを、自分は何一つ知らなかったのかもしれない。


ザーザーと響く雨の音は、どこか私を責めているようにも聞こえて、どうしても胸が騒いだ。

けれど、そっと指で自分の唇に触れてみる。
柔らかな感触がまだ唇に残っているようで、思い出すだけでドキドキする。





いけないとことだとわかっているのに、血が、沸騰しそうだった。
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