彩りの日々
「もう来なくていいから」

「私が来ると、……邪魔?」

できれば少しくらいは世話を焼かせてほしいと思った私に、ぐっとしょうちゃんの眉間の皺が深くなる。

いつものよりももっとずっと不機嫌そうな、苛立った低い声。


「あのさ、この前の、意味分かってなかったの? こんな時間に一人で男の家来んなって言ってんの」

その意味を理解して、カァッと私の頬が熱くなる。

「俺はみちのこと好きだから」

察しが悪い私でもさすがにそこまで直球に言われればしょうちゃんの言わんとしていることはわかるが、どうしてしょうちゃんが自分なんかをと困惑してしまう。

「だからもうこんな時間に来んな。俺はみちのこと、そういう目で見てるから」

「そういう目?」

「エロい目だけど?」

察しの悪い私に苛立って今度こそしょうちゃんは舌打ちを漏らす。

「好きな女が目の前にいたらエロい目で見るよ。俺だって男なんだから」

なにもわかっていなかったのは、私のほうだ。
しょうちゃんのこの前のキスも気の迷いだとそう思い込もうとして、何もなかったかのように振る舞えば前のように姉と弟のような関係に戻れるのではないかと。

卑怯にも私はそう思っていた。

とっくにしょうちゃんのほうは私のことを姉だなんて思っていなかったのに。
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