彩りの日々
－10歳の目線
俺の好きな女は、ずっと昔から俺の兄貴の事が好きだ。

しかもその女は、特段に鈍い。

それでもいいと思ってた。
俺はどうせ弟にしか見られないし。

兄貴が恋人と別れたって聞いた時、もういっそみちが兄貴と付き合えばいいと思った。
嫌だけど。ほんとはそんなの死ぬほど嫌だけど。

でも、それでみちの長年の不毛な片思いが実るなら、みちが兄貴の隣であのいつもののほほんとしたムカツク顔で幸せそうに笑ってられるなら、それでもいいと思った。
なのにあいつは、

「だ、だって……二歳って、結構大きな壁なんだよ」

なんて言って尻込みして自分の気持ちからまた目を逸らしてた。
すごく腹が立った。

たった二歳くらいなんだっつーの。
じゃあ十歳も上のお前を好きな俺のこの気持ちはどうなんの。

ずっとみちの事見てたから、みちがどんだけ兄貴の事好きだったかわかってる。
だからいっそみちがもう俺の手が届かないってわかるくらい兄貴の恋人にでもなって幸せになってくれればよかったのに。
結局俺は諦められないまま。

しかも兄貴に頼まれたからなんていって俺の世話焼こうとしてくるのも少し嫌だった。（これは兄貴の読み通り一人になった途端怠惰になった俺の生活態度も良くなかったけど）
いや、嘘。ほんとは結構嬉しかった。

弟にしか思われてなくても、みちが俺に会いに来るって言うのは、けっこういいなって思ったし。
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