彩りの日々
小さな幸せに浸っていると、かずくんの隣を歩いていたかずくんの弟のしょうちゃんは少しむすりとした不機嫌そうな表情で「俺、先行く」と、早歩きで駅までの道を先に行ってしまった。

私がにこやかに挨拶をしても無視だ。
かずくんに注意されてぶすりとした不機嫌顔でぼそぼそと言葉を交わすこともあるけれど、ここ何年かはずっとあの調子。
昔は年の離れた兄のかずくんにもべったりで、私のことも「みっちゃん!」と呼んでニコニコと笑いかけてくれていたのに。

背も伸びて顔立ちもかずくんに似てきたけれど、いつも気さくで朗らかなかずくんと、不機嫌そうに眉間に皺を寄せているしょうちゃんでは似た顔立ちでも大分印象が違う。

高校二年生というのは難しい年頃なのかもしれない。



「翔も最近生意気なんだよなあ。反抗期ってやつかなあ」

と言いつつもかずくんの顔は弟が可愛くて仕方ないという顔をしていた。

私ものんびりかずくんの隣を歩きながら少し眉毛を下げて微笑むその横顔を見つめる。
この時間が一番の至福だ。
私のずっと変わらない初恋。
どこにも行き場はない恋心だけど。

それでもこうして隣を歩いて、何気ない会話をする今が、一番幸せ。

子供の頃の二歳差というのは大きい。
たった二歳差とも思うけど、二つ年上のかずくんは私にとってはずっとヒーローだった。

憧れの先輩。
私の同級生でもかずくんに憧れる女の子は多かった。
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