彩りの日々
『ちゃんとみちに迷惑かけずに生活できてるか?』

からかうような兄貴の声は、みちのスマホのスピーカーから聞こえる。

みちと俺が今日一緒に昼飯を食べると知った兄貴が電話をかけてきた。
相変わらず兄貴は俺に過保護だし心配性。

「大丈夫だよ。今日はしょうちゃんがお昼ご飯作ってくれてね。美味しかったんだよ」

少し嬉しそうなみちの様子に正直ちょっと面白くないというか、妬いてしまうけどそれを態度に出すのもガキくさいと思って、とりあえず二人の近況報告の会話に黙って耳を傾ける。




『一輝、これどこ置けばいい~?』



聞き慣れない女の声が遠くから聞こえて、ピシッと一瞬場の空気が凍った。

『あ、悪い、そこおいといて』

一緒にいるらしい誰かに話しかける兄貴の声。
その声に俺もみちも全てを察した。

少し俯いたみちの表情が丁度俺の座っている位置から見えなくて、どんな表情をしているのかわからなかったけど、こんなの平気なはずがない。

「あ、彼女?」

と、極めて普通の声音で、みちは問いかける。

『あ、ああ。……より戻したんだ。遠距離なんて言ったって、会えない距離じゃない! って。高速飛ばして会いに来てくれてさ』

少し照れ臭そうな兄貴の声。

それがどんなにみちを傷つけるのかわかってない男の声。
兄貴は何にも悪くないけど、少しだけ腹が立つ。
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