彩りの日々
何が一体直視できないというんだろうか。

私が好きなのはかずくんで、それだって別にこっそりひっそりただ勝手に想っていられれば満足するだけの些細な恋で。
それだけで良かったはず。


平凡平穏な日常に少しばかりの彩りで、満足できているはず。

――……覚えてて。俺はみちのこと、男として好きだから。

けれど、今私の頭に浮かぶのはかずくんじゃない。


しょうちゃんだ。

しょうちゃんの拗ねたような顔、眉間に皺寄せた不機嫌そうな顔。

それから、小悪魔みたいに私を翻弄する勝ち誇ったような笑顔。

気づいて、気づいてしまった後に愕然とする。




――……私、もしかしたら、しょうちゃんのこと……?



認めたくない。絶対に認めてはいけない。

そう思うのに、気づいてしまった。

もうしょうちゃんのことを弟だとは思えない。

これはちゃんとしないといけない。

しょうちゃんに何を言われても、私がしょうちゃんを弟としか見ていないのであればきっと問題なかった。

大人としての節度を持って対応できていたら、何も問題はなかったけれど。


ダメだ。
こんな気持ちは持っちゃいけなかったんだ。
きちんと大人としてケジメをつけないとならない。


翔ちゃんは気の迷いを起こしているだけなんだから。

それをわからせてあげるのが大人である私の使命だ。
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