彩りの日々
でも私は甘く見ていた。

しょうちゃんの長年の私への片想いは、たった二年の年の差で尻込みしていた私の生ぬるい片想いとは全然違った。

十年を飛び越えようとする男の子が、こんな言葉で引くはずがなかったのだ。


ドアノブに手をかけて引こうとした手を邪魔される。

「俺は、みちが好きだって言ってんの」

ドンと、ドアが引けない様にしょうちゃんはドアに手をついた。

「普通なんて、知るかよ」

しょうちゃんとドアの間に閉じ込められてしまった私の耳元にしょうちゃんの余裕のなさそうなかすれ声が聞こえて、思わずびくりと体を震わせた。

「……しょ、しょうちゃんは、勘違いしてるんだよ。……まだ学生で、外の世界を知らないから、……私への気持ちを恋愛感情だって勘違いしてるだけで……」

「なにそれ? 俺のことバカにしてんの?」

「だって、変だよ……私の事好きなんて……。十個も上だし、……平凡代表みたいな私なんか……」

「俺だってなんでみちみたいなの好きかわかんねーよ。初恋拗らせて俺の兄貴のこと長年好きな面倒くさい女だし、鈍感だし、お節介だし」

「結構ひどいこと言うね!?」

あまりの言い分に(本当のことなのでぐうの音もでないけど)後ろを振り返ったのがまずかった。

至近距離でまっすぐな、曇りのない目が私の心臓ごと射抜いてくる。


「でも俺はみちがいいの。みちじゃなきゃやなの」


子供みたいなしょうちゃんの言い分に何か言い返さなければと思うのに、私は言葉を失ってしまったように何も言えなくなる。
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