彩りの日々
「実はみちに頼みがあるんだけどさ、……」

「頼み?」

「翔のことなんだけど……」

かずくんにしては珍しく歯切れが悪い。
何か言いづらいことなんだろうかと私は首を傾げる。

「……実は俺、しばらく単身赴任しなきゃならなくなってさ。それがちょっといつこっちに帰って来られるかわからなくて……」

「えっ……」

その知らせに私の頭の中は一瞬真っ白になってしまった。

かずくんと会えるのが毎日の楽しみだったのに。

私の平凡平穏な日々を愛してはいるが、その中の些細な彩りすらも消えてしまうのは悲し過ぎる。

かずくんとしばらく会えなくなるのは寂しくて、胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちになってしまう。

「……それは……寂しくなるなあ」

上手く言葉が出て来なくて、そんななんの捻りもない感想を漏らしてしまった。

私の沈んだ声に、

「俺もみちに会えなくなるの寂しいよ」

と苦笑しながらかずくんの大きな手が私の頭を優しく撫でる。

かずくんにとって私はいつまでたっても妹のようなものなのだろう。

だからこうして子供扱いをする。

いい年齢の二人なのに子供の頃と変わらない、どうしても越えられない二歳という大きな壁を感じる。

“寂しい”の意味合いがきっと自分とかずくんでは全然違うのだろうということはわかっているが、胸の奥がチクリと痛んだ。
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