彩りの日々
「翔にも一緒に行こうって言ったんだけど、あいつはこっちに残るって、一人で大丈夫なんて言っててさ。……ただ、今もツンツンしてるけど、昔と変わらず寂しがり屋だと思うんだよなあ」

大きく溜息を吐くかずくんは兄と同時に父親のような顔をしていた。

かずくんとしょうちゃんの両親が亡くなった時しょうちゃんはまだ六歳だった。
その時からかずくんはしょうちゃんにとっては兄であり父親代わりをしている。

「あいつ家事とかはむしろ俺よりできるし、しっかりしてるけど、自分一人になったらちゃんと飯とかも食わないんじゃないかなとかも心配しててさ。そういうとこテキトーだからさ。だからたまにでいいからあいつの様子見てくれないかな?」

両親を早く亡くしたせいか、幼い頃は人一倍寂しがり屋で甘えん坊だったしょうちゃんを思い出す。
確かに、そのしょうちゃんが家に一人で取り残されるのは私もなんだか心配だった。
私にとってもしょうちゃんは大事な弟のような存在だから。

「わかった! 任せて!」

それにかずくんが他の誰でもなく私を頼ってくれたことが純粋に嬉しかった。

「ありがとな」

そのかずくんの眩しい笑顔を見ると、胸の奥がキュウッと甘く締め付けられる。

(……やっぱり私はかずくんが好きなんだなあ)

などと噛みしめてみたところで、この奥深くに閉じ込めた初恋に行き場はないのが少しだけ寂しいが。
こうして仲良しの幼馴染でいられるのならそれでいい。

もう何年もずっと言い続けている言い訳をまた心の内で唱えるのだった。
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