彩りの日々
「しょうちゃん、学校は楽しい?」

「……別に。……ふつー」

「ふつーかあ。まあでもふつーって言えるってことはかねがね良い学校生活かもしれないね」

「……」

しょうちゃんの通っている高校は私もかずくんも通っていた学校だ。

「あ、あののんびりした日本史の優しいおじいちゃん先生、まだいる?」

「……俺、専攻世界史だから」

「そっか。世界史か~。世界史はカタカナが多くて覚えるの難しかったなあ」

のんびりとあれこれ話題をふる私に対してしょうちゃんは鬱陶しそうな顔をしているが一応返事はしてくれる。

これは一応コミュニケーションとして成立しているのではないだろうか。

「かずくん、しばらく単身赴任なんだって? しょうちゃんも寂しいでしょ」

「……別に」

また、別に、だ。

あんなに小さな頃はかずくんの後ろをくっついていた甘えん坊のしょうちゃんを思い出していた。

寂しくないはずはないと思うけれど、弟の矜持としてそれを見せまいとしているのかもしれない。

確かにこれくらいの年齢の男の子が簡単に「寂しい」とは言わないか。
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