【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 まさか自分もこの中から結婚相手を選ばなきゃならないなんて。
 思いもよらない事だった。


 これは確かに他人事じゃない。
 自身の事でもあるんだ。


 衝撃的事実に私は口を開けたまま頬を引きつらせる事しか出来ない。


 そんな私に言葉を投げ掛けたのは零士だ。

「言っておくが、俺は愛良にしか興味ない。だから間違っても俺を選ぶなよ?」


 ……は?
 なんて言った?
 何こいつ、自意識過剰?
 ふざけるな!


 零士のふざけた物言いに私は言葉を取り戻し叫んだ。

「選ぶ訳ないでしょう⁉ あんたみたいな顔面詐欺男、こっちから願い下げだわ!」

 言い終わるとすぐに喧嘩腰な声が返ってくる――と思った。

「……」

 でも返ってきたのは声じゃなくて、何とも表現し難い微妙な表情と視線。

 それに戸惑っていると、うなるような声が返ってきた。


「……お前にだけは言われたくねぇよ」

 喧嘩腰と言うほどには覇気が無く、苦々しい表情。

 その零士の様子にも戸惑ったけど、言葉も意味が分からなかった。


 私には言われたくないって、どういうこと?
 『選ぶ訳ない』ってのはお互いに思ってることでしょ?
 そんな事で今更言われたくない、なんて言う必要無いし。

 って事は……顔面詐欺男って所の事?
 でもそれこそ訳がわからないんだけど?


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