【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 私が何か変なことをしたわけじゃなかったんだね。
「うん、分かった。よろしくね、嘉輪ちゃん」

「……嘉輪」
「……」

 ……呼び捨てろってことか……。

「よろしく、嘉輪」
「うん。改めてよろしくね、聖良って呼んでいい?」
「うん、勿論」

 そんなやり取りを最終的には苦笑いで終わらせる。
 ちょっと面倒臭いと思ったのは内緒だ。

 でも、こんな綺麗な子に名前で呼ばれると思わずドキドキしてしまう。
 同性すらも魅了してしまう美人さんだな。と思いながら改めて嘉輪を見たとき、襟に付いているピンに目が留まった。


 …………あれ? どうして?


「あ、これ気になった?」
 私の視線に気づいたらしい嘉輪が、ピンブローチを見せるように襟をつまんだ。

「うん。ピンのことは聞いたけど……。何で嘉輪の襟にはHとV両方あるの?」
 Hはハンター。Vは吸血鬼。
 嘉輪はどっちなの?

 ピンブローチを見つめながら難しい顔をしていると、嘉輪が説明してくれる。

「まあ、言ってしまえばそのままの意味かな? 吸血鬼でありながら、ハンターになる生徒って事」

 嘉輪の言葉を理解するのに少しかかる。
 そして、理解出来てもすぐには飲み込めなくて目を何度も開けたり閉めたりしてしまう。


「……吸血鬼でも、ハンターになれるの?」

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