【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 待ちきれなかったんだから仕方ないでしょ、と思いつつも悪いとは思うのでちゃんと謝る。

 それに愛良からの謝りなさいよという圧が凄かったし。


「いいのいいの。私ももっと早く準備しておくべきだったし」

 手をパタパタと振って気にするなと言ってくれる嘉輪。
 でも次いで「あー」と気まずげに視線をそらした。

「ただ、鏡は来てるかちょっと怪しいかな?」


 そうだった。
 もう一人が待ち合わせ場所に来ていないと、どんなに早く行っても温泉には入れないんだった。

 愛良のために紹介してもらうっていうのが本来の目的なんだから、その鏡って子を無視して温泉に行くわけにもいかない。


 とりあえず、待ち合わせ場所だという一階の多目的ホール――あのホテルのラウンジみたいなところに向かった。

「んーやっぱりいないかぁ。あの子結構いつもギリギリだからねぇ」

 少し困ったように言った嘉輪だったけれど、気を取り直してソファーに座って待つことにした。


「ちなみにその鏡って子はどんな人なんですか?」

 待っている間に事前情報を得ようとしたんだろう。
 愛良が少し緊張した様子でそう聞いていた。

「どんな子かぁ……。うーん、一言で言うと……うるさい」

「う、うるさい?」

 いきなりいい評価とは言えない単語が出てきて私も愛良も戸惑う。


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