【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それも、分かってはいても実感していなかったことだった。


「あー、カギかけ忘れてたな。まあ、代わりに気になってた女が迷い込んできてくれたから上々ってとこか」

 そうして彼はドアを閉め、ガチャリとカギをかけた。

 この資料室のドアは一つだけ。

 つまり、逃げ場がなくなってしまった。


 どうする?

 どうすればいい?


 自問しながら視線を周囲に向ける。


 上の方にある窓は開いているけれど、到達する前に引きずり降ろされるのがオチだ。

 私の後ろにも外が見える窓があるはずだけれど、物が多すぎて塞がれている。


 倒れている女子生徒にいい案がないか聞こうかとも思ったけれど、彼女はもう気絶してしまったのか意識はなかった。


 万事休す!


 心臓がドッドッと嫌に早く鳴っている。

 まずい状況に嫌な汗も出てきた。


 後は、スマホで誰かに助けを求めるくらいしか……。


 私は岸に気付かれないようにソロソロとカバンの中に手を入れようとする。

 でも、それを彼が許すはずがなかった。


 スマホを掴めたと思った瞬間、いつの間にか目の前に来ていた岸にその腕を掴まれ引かれる。

「いたっ!」

 強く掴まれ、手にしびれを感じた。
 そのせいで手に持っていたスマホが零れ落ちてしまう。


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