【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 何が起こっているのか分からず、私はただ疑問を口にする。

 岸は、じゅくっと私の血を吸い飲み下してからその疑問に答えた。


「なんだ、知らねぇの? 吸血鬼に咬まれると、性的な快感を得られるんだぜ?」


 性的な、快感?


 熱でぼうっとしてくる頭で考える。

 このおかしな感じが快感なんだろうか?

 でも、どんなに変な感じがしても気持ちがついていかない。


 恐怖と、不快感。
 そして何より岸という吸血鬼への拒絶感が、快感なんていうものを弾いていた。


 ただただ、体がおかしくなっているようにしか感じない。

「っはぁ……ヤバイ、美味過ぎる。あんたは本物の“花嫁”のおまけだろ? 何でこんなに(かんば)しいんだ? 何でこんなに……俺を酔わせる?」

 間近で視線が合う。

 彼の目が、妖しく揺らめくのが分かった。


「すげぇイイ顔してる」

 熱い吐息とともに、首の血を舐めとられる。

 ゾワゾワっと、変な感覚と嫌悪が混ざった。


 でも、一通り舐めとられた後はドクドクと血が流れ出ていた感覚がなくなる。

 どうなっているのかは分からないけれど、咬んで出来た傷は塞がったようだった。


 そのまま血が流れ出ないことには安堵するけれど、状況的には全く安心出来ない。


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