【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 血を吸って満足するのかと思いきや、岸の目は妖しく私を捉えていた。

 頭を抱えるようにしていた腕が解かれたと思ったら、今度はそのまま左頬の辺りをガシリと強めに掴まれる。


 少し離れたことで良く見えるようになった岸が、私を獣のような目で真っ直ぐ見ていた。

「っ!」

 喉が引きつって声も出ない。


 今の岸の目は吸血鬼だからとか血を吸われたからとか、そういうのとは違う怖さがある。

 もっと単純な、男としての怖さ……。


 私の血をつけたままの口角が上がる。

「“花嫁”だから気になるのかと思ってたんだけどなぁ……。お前の血、ヤバ過ぎ。……その顔も、ソソられる」

「やっ」

「全部俺のものにしたくなった」

 その言葉の後、ずっと掴まれていた右腕がやっと放された。
 でも、その手は腕の代わりに私の太ももを撫でる。


「やっダメっ!」

 両手で岸を押し返そうとするけれど、男女の違いなのか彼が吸血鬼だからなのかビクともしなかった。


「いいぜ? 抵抗しろよ。無駄な抵抗してるあんたすげぇソソられる」

 言葉一つ一つが耳を犯しているかのようだ。


 嘘、やだっ!

 
 岸の顔が、また近付いてくる。

 態度とは裏腹に、真剣な目が真っ直ぐ私だけを求めている様に見えた。

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