【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 その様子にはドキリとするけれど、言葉よりも行動で示そうとする岸にはやっぱり恐怖の方が勝る。

 それに、ニヤリと意地悪な笑い方をする彼にはむしろ拳をくれてやりたい。

「名前……確か聖良だったなぁ?」

「な、にを……っや!」

 太ももを撫でていた手が内側の柔らかい部分を撫で始めて、さらに拒否しようと岸の胸を押す。
 ……びくともしなかったけれど。


「可愛いなぁ、聖良」
「っ!」

 言われ慣れていない言葉に、こんな非道な相手だっていうのに心が反応する。

 みんなには可愛い外見だとは言われたけれど、こんな風に真っ直ぐ求める様に言われたわけじゃ無かったから……。


 それでも、こんな奴になんて好きにされたくない。

「はな、してっ!」

 こんな相手に心が揺れてしまった事も否定したくて、より強く拒否した。

 でも、やっぱりびくともしなくて……。


 更に近付いた顔が耳に直接語りかけてくる。

「聖良……その血も身体も、俺が全部奪ってやるよ」

「っ!」

 言葉通り奪われると思った私は、せめて大声を出そうと震える唇を開く。

「ぃっ……」

 そして声を出そうとした時だった。

 バアァン!

 鍵のかかっているドアが大きく鳴る。


 ガンッ!
 ガァンッ!

 ドアを蹴りつけてでもいるんだろうか。
 大きな音は何度も響く。
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