【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
でも横開きのドアとは違ってここのドアは片開きドアだ。
しかも鍵がかかっている。
ただ蹴りつけただけじゃあ開かないだろう。
そう思ったけれど……。
ドガァン!
ひと際派手な音を立ててドアが吹っ飛んだ。
『聖良!!』
二つの声が重なって聞こえる。
真っ先に飛び込んできたのは嘉輪。
そして田神先生だった。
必死な表情の二人に泣きたくなってくる。
助けに来てくれた。
それが嬉しくて、申し訳なくて、目じりに溜まっていた涙がこぼれる。
「チッ、邪魔が入っちまったか」
忌々しそうに舌打ちをした岸は、それでも私の耳にその唇を寄せた。
「今日のところはここまでだ。でも忘れんなよ? お前の血を初めて飲んだのは俺だってことをな」
「あんた! 聖良から離れなさいよ!」
岸が言い終えたのと嘉輪が叫ぶのは同時だった。
嘉輪がこっちに来る前に、岸は私から離れて窓のある方に飛びのく。
「純血の姫が相手じゃあいくら“花嫁”の血を飲んでても分が悪いな。ここは逃げさせてもらうぜ?」
そう言い残すと、邪魔な資料の山を押しのけて窓を開け、止める間もなくそこから出て行ってしまう。
「正輝! 行って!」
「分かってる!」