【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 正輝くんも来てくれていたのか、嘉輪の呼びかけに応じてすぐに窓から岸を追いかけていく。


 岸の姿がなくなって、私はやっとまともに呼吸が出来た。

 息を吸って、吐くと同時に体の力が抜ける。


 倒れそうな私を抱きとめてくれたのは嘉輪だ。

 ギュッと抱きしめてくれて、安心する。


「遅くなってごめんね」

 悲痛そうに言った嘉輪に、違うと言いたかった。

 私の警戒心が足りなかったんだ。
 せめて、この部屋に入る前に誰か他の人を呼んで来れば……。

 後悔が後を絶たない。


 私を思ってあんなに自己防衛しろと言ってくれたのに。

 そう一番言ってくれていた嘉輪を悲しませてしまった。


 それが一番辛い。

「嘉輪がそんな顔、する必要ないよ? 私の警戒心が足りなかったのが悪いんだから」

「でも、血を吸われちゃったんでしょう? 痛いし、怖かったでしょう? そんな思いしてほしくなかったのに……」

 私より泣きそうな顔になっている嘉輪に、申し訳なさと一緒に嬉しいなとも思う。


 会ってからまだ一週間も経ってないのに、こんなに気遣ってくれるなんて。

 ホント、嘉輪っていい子だな。


「嘉輪が助けてくれたから大丈夫だよ。ありがとう」

 そう言って抱きしめ返すと、「バカ……」と涙声で言われてしまった。


「聖良ちゃん⁉」
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