【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 膠着状態の私達に、田神先生がそう声をかけた。


 あ、呼び方戻ってる。


 さっき、嘉輪と飛び込んできたときは呼び捨てだった。

 ……私の聞き間違いじゃなければだけど。


 普段さん付けしている田神先生が必死の表情で呼び捨ててきたからちょっとびっくりしたんだよね。


「この子も連れて行かないと」

 そう言って気絶して倒れている女子生徒を見ると、田神先生は俊くんと津島先輩を呼んだ。


「悠斗、俊。この子を運ぶのを手伝ってくれ」

「あ、ああ」
「はい」

 そうして女子生徒を二人に任せると、田神先生はまた私に寄り添ってくれた。


「聖良さん、立てるか?」

 そう言われて田神先生の手が背中に当たった瞬間――。

「っ!」

 私は思わずビクリと大きく震え、抱きとめてくれていた嘉輪にギュッとしがみついた。


 ほとんど無意識の行動で、あれ? となる。

 でも田神先生の固い手が触れた瞬間、怖いと思ってしまったんだ。


「聖良……」

 嘉輪を見るとまた悲痛な表情。


「……聖良さん……」

 田神先生を見ると、辛そうに顔が歪められていた。


 それを見て、私は自覚する。


 多分私、今男の人が怖くなってるんだ……。
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