【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 薬塗りたくってさっさと消そう。

 そう決意した。


 コンコン

 その時、保健室のドアが控えめにノックされる。


「どうぞ、入っていいわよ」

 高峰先生の言葉の後、横開きのドアが開けられ愛良と五人の婚約者候補、そして田神先生が入ってきた。

 女子生徒を運んだ後、他の皆も呼んでくると言って田神先生達三人は保健室を出て行っていたんだ。


 みんなが室内に入ってドアを閉めると、真っ先に愛良が私に飛びつく勢いで近付いてきた。

「お姉ちゃん、血を吸われたって聞いたけど……大丈夫なの?」

 少し(つつ)けば泣いてしまいそうなほどの心配顔。

 愛良を泣かせたくない私は、笑顔で大丈夫だと言った。


「大丈夫よ。でっかい蚊に刺されたようなものだって」

「そう、なの?」

 私の表現が予想外だったのか、愛良は目をパチクリしながら聞き返してきた。

「そうそう。少ししか吸われなかったし、体調にも問題はないから」

「……そっか」

 まだ心配顔ではあったけれど、泣きそうなほどではなくなったから安心した。


 愛良の後ろの方で男性陣が「でっかい蚊……」と呟いて何やらとても複雑そうな顔をしていたけれど、まあ愛良を泣かせないことの方が重要なんだからいいよね。


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