【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 するとしばらく沈黙が落ちた。

「……近くにいる中で一番平気なのは零士、か」

 沈黙を破るように呟いたのは田神先生だ。

 眉間に深いしわを刻んで考え込んでいる。


 その顔が上げられると、とても言いづらそうに言葉を紡いだ。

「……とても、とても嫌がられるのは分かっているが……」

 そう前置きをされて嫌な予感しかしない。

「聖良さんの護衛は主に零士に頼む」

「え⁉」
「はぁあ?」

 ものすごく嫌そうな声が私と零士の口から出てきた。


 そりゃあそうでしょう。

 私達がどれだけ仲悪いと思っているのか。

 田神先生だって分かってるはずなのに。


 まあ、だから前置きがあったんだろうけれど。


「無理、ぜってーやだ」

「断固拒否します」


 先に零士が拒絶し、私も続く。

 零士と同じ意見になるのは(しゃく)だけれど、こればっかりはちゃんと意見を通しておかないと。


「二人とも……仲が悪いことは重々承知で言ってるんだ。将成は中等部で校舎が違うのに常に守れるわけがないし、何より近くにいる愛良さんの護衛についてもらいたい」

「……それは、はい」

 浪岡君が私の護衛につけない理由は分かる。

 私としても愛良の守りを薄くしてほしくなんかない。


「でも、それなら津島先輩や俊君でも……」

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