【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「え? いいんですか?」

 その提案を聞いたとき、私も愛良もそう聞き返していた。

 提案されたのは前の学校のお別れ会のこと。
 延期になっていたそれを落ち着いたらやろうということだった。

 護衛もたくさん必要になるからと断られていたそれを本当に今やってもいいのか。

 そんな疑問が浮かぶ。


「ああ。君たちの気分転換にもなるだろう? 私達が至らなかったせいで今の状態になってしまったんだ。出来る限りのことはする」

 あまり気に病まないで欲しいとは思うけれど、流石に心労が重なり過ぎていたから田神先生の言葉は否定できない。

 それに、お別れ会が出来るのは単純に嬉しかった。


 吸血鬼とかハンターとか、そういうのを忘れて有香たちと遊ぶことが出来れば確かに気分転換になるだろう。

 喜ぶ私達に、田神先生は「でも」と気まずそうに付け加えた。


「聖良さんの男性への苦手意識がもう少し緩和(かんわ)出来たら、なのだけれどね」

 そんなぁとは思ったけれど、今の状態では護衛をつけてもちゃんと守り切れるか不安が残るからと説明を受ければ納得するしかなかった。

 守るために腕を引かれたり抱き上げられたとき、硬直してまともに動けなくなったらただのお荷物になってしまう。
 いざというとき動けないのはリスクが大きいって判断されても仕方がない。

「分かりました。頑張って克復してみます」

 そう宣言した私に、田神先生は優しく微笑んでくれたのだった。
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