【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 確かにデスクの上などは散らかっているけれど、床にものが落ちていたりなんてことはない。

 これで散らかっているなら私の部屋も散らかっているってことになっちゃうよ。


「リビングでやっちゃダメだったんですか?」

 場所を移す必要まであったのかなと思って聞いてみると。

「……君は私に抱き締められたりするところを零士に見せたいのかい?」

「見せたくなんてないです!」

 反射的に答えていた。


 誰が好き好んで見世物みたいになりたいと言うのか。


「だろう?」

 と言って、田神先生は座る場所を用意してくれる。

 向かい合うように座って片手を出された。

「まずは腕を掴むところから順番に見て行こう」


 田神先生とは、腕を掴まれた時点で硬直と震えが来ていたんだっけ。

 あれから良くはなっているはずだけど、田神先生とはあれ以来接触していなかったからな……。


 自分でも大丈夫か不安だったため、恐る恐る田神先生に腕を差し出した。

 軽く掴まれるのは大丈夫そうだ。


 田神先生も緊張していたんだろうか。
 ふぅーと息を吐いて「大丈夫そうだな」と呟く。


「よし、じゃあこの調子で少しずつ見て行こう」

 その宣言通り、背中に手を当てて見たり肩を掴んでみたり。


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