【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 一通りやってみて大丈夫だったため、最後に抱き締めるというところになった。


「じゃあ、まずは軽く行くよ?」

「っ、は、はいっ」

「……どうした? さっきまではそこまで緊張していなかったのに」


 やはりまだ……なんて言い出したものだから私は慌てて違うと叫んだ。

「違うんです! その、抱き締められるのって普通に恥ずかしいですしっ! いつもの先生だったら親戚のお兄さんみたいだと思えば大丈夫だと思うんですけど!」

「……親戚……」

「でも今日の先生は若く見えて年も近く見えちゃって、何ていうか……同年代の人に抱き締められるような気がして恥ずかしいっていうか!」

「……」

「とにかく、怖くて躊躇っていたわけじゃないんです!」


 一気に言い切って肩で息をする。

 息を整えながらもしかして失礼になるようなこと言っちゃったかもしれないと思った。


 同年代に見えるって、逆を言えば大人に見えないって言ってるようなことでしょう?


「……ほぉ……同年代、ね」

 田神先生もその言葉に反応した。


 やっぱり失礼になっちゃったかな?


 そう思って先生の顔を見上げると、予想とは反した表情をしていた。


 目は優し気だけど、口元は少し意地悪く口角が上がっているというか……。

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