【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「すまないな……自分の感情を抑えられると思っていたんだが……」

「え?」

「抱きしめたら、抑えが効かなくなった」

 そう言って田神先生の手が私の頬を撫でる。


 それは、どういう意味ですか?

 思いは言葉に出来なかった。

 でも、先生は意をくみ取って話してくれる。

「本当はまだ言うつもりはなかったんだが……」

 数拍開けて、言葉が続く。


「聖良、俺はお前に好意を持っている。もちろん、一人の女性として」

「え……?」

 先生の目は真剣で、冗談を言っているようには見えない。

 でも私は突然のことに頭が付いて行かない。

「え? いつから……っていうか、どうして……?」


 混乱する私に、先生はゆっくりと一つ一つ話してくれた。


「はじめは好意とかは無くて、ただ“花嫁”を自分の手に出来るかもしれないという打算だった」

 すまない、と謝りながら説明される。


 愛良の相手はあの五人の中から選ぶと決められていた。

 でも、突然現れた私という存在には明確な相手は決まっていない状態なんだそうだ。


 だから決められてしまう前に自分を選んでもらえるように根回しするつもりだったんだと……。


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