【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 愛良の非難する声。

 それらに自分の言ってしまった言葉がどう受け取られるか気付き後悔する。

 でも言葉として出してしまったものは喉の奥には戻ってくれない。


 嘉輪がどんな顔をしているのか見たくなくて、うつ向いてしまった。


「……」
「……」

 気まずい沈黙に、顔を上げられなくなる。


「……私に守られたくはない?」

 少し寂しそうに、嘉輪の声が確認してくる。


 今ちゃんと訂正しないと。
 じゃないと誤解させたままになってしまう。

 そう思って声を上ようとしたけれど、喉の奥で詰まって出すことが出来ない。


 早く言わないと!

 違うんだって。

 守られたくないんじゃなくて、守って貰うことで嘉輪にばかり負担をかけているような気分になってしまうんだって、言わなくちゃ!


「……あ――」

「ごめんね」

 何とか声を上げれるかと思ったとき、なぜか嘉輪が先に謝ってくる。


「え?」

 驚いて顔を上げると、悲し気に眉尻を下げた嘉輪の顔が見えた。

「ごめんね聖良。それでも私はあなたを守りたい」

「っ!」

「友達が危険な目に遭うって分かっていて、私なら守れるって分かっている状況で何もしないなんて私には出来ないから」

 だからごめんね、ともう一度繰り返す。


「あ、ちがっ……」

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