【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「岸だって結局まだ捕まっていないんだ。この機会に何かしてくる可能性だってある。守られるのが負担だなんて思われてちゃあ二の舞になりかねないからね」

 だから、今言ってくれて良かった。と正樹君は言った。


 ……岸……。

 そうだ。

 あいつは結局あのまま逃げおおせてしまった。


 別れ際の言葉を思うに、あいつは私を狙ってくる。

 それが分かっているのに、守りを薄くしようとか考えること自体無謀なことだったんだ。


 そんなことにすら思い至らないなんて……。


「本当に、ごめんね」

 自分が情けなくてまた謝ってしまう。


「だから良いって。でも、だからこそ地元の友達の方にはちゃんと聞いてみてね?」

 またしょんぼりしてしまった私に、嘉輪が元気付けるように明るく言う。

 だから私は「分かった」としっかり(うけたまわ)る。

 ……でも、有香達からはOKの返事をもらうことは出来なかった。


《え? どうして?》

 嘉輪達には遠慮してもらってちょうだい。

 そんな返信がきてすぐにメッセージを送った。


 有香達なら人数が多い方が盛り上がるし、って言ってOKしてくれると思ったのに。


《だって、聖良とあたし達のお別れ会なんだよ? 部外者が多いとちゃんとお別れ出来ないじゃない》

「部外者って……」

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