【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そんなことよりも、断られてしまったことを嘉輪に伝えなきゃという方に思考がシフトした。

「というわけで、ダメだったんだ。ごめんね嘉輪」

 翌朝早速そう伝えると、愛良も同じような報告をする。

「お姉ちゃんも? あたしもそんな感じ。あたしとのお別れ会なんだから他の人は増やさなくていいでしょって」


「まあ、残念だけど仕方ないわね。じゃあどこでやるか分かったら教えて、近くで待機するから」

 カフェオレを飲みながらそう言ってくれる嘉輪に、私は「ありがとう」と伝えた。

 すると、嘉輪も笑顔でどういたしましてって返してくれる。


 これで、これだけで良いんだ。

 守って貰ったらありがとうってお礼を言えばそれで良かったんだ。

 それで、いつか嘉輪が困ったことがあって、私が手伝えることがあれば今助けてもらっている分を返せばいい。


 昨日、部屋に帰ってからも色々と考えて出した結論だ。

 当たり前のことだけど、それを実行すればいいだけだって思うだけで今までのモヤモヤした気持ちが払拭された。


 単純なことだけど、大事なこと。


 それを理解したことで、私はちょっと心の余裕が生まれた。

 その余裕のおかげだろうか?


 それからというもの、愛良と零士が仲良くしているところを見てもモヤモヤしなくなってきたのは。

 寂しさはやっぱり感じるけれど、仕方ないなって思えるようになった。


 私、いろんな意味で余裕がなかったんだろうな。


 そんな、ほんのちょっとだけ成長しつつお別れ会の準備は進んで行った。
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