【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 ……そのまま丸め込んで唇を奪わなかっただけ、俺は紳士だったという事だろう。

 でも本音を言えば、もっと抱きしめたかったしキスしたかった。

 抑えられたのは、今はまだ教師と生徒という間柄だったからだろう。


「聖良、早く大人になってくれ」

 まだ少女の殻を破ることが出来ない彼女に願う。

 先生と生徒という垣根を早く取り払いたい。

 なんの躊躇いもなく彼女に触れる権利が欲しい。

 聖良が俺を選んでくれたのなら、正式な婚約者として側にいることが出来るのに……。


 空になったグラスに残る氷がまたカランと鳴った。


 俺はフーッと長く息を吐き、心を落ち着ける。

 とりあえずは、お別れ会で聖良を守り切ることを優先しなければ。

 あの岸も、何か仕掛けてくるかもしれないからな……。


 守り切り、出来るなら岸も捕まえてしまって、そうしてからゆっくり聖良との距離を詰めて行こう。

 その未来を現実にするために、今は気を引き締めた。
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