【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「今は大丈夫なの?」

「はい、店の中には仲間しかいないみたいですから」

 そうして離れると、俊君の腕に有香が飛びついた。


「聖良ばっかりズルい! あたしも赤井くんとスキンシップしたいよ」

「え? いや、今のは護衛としてやったことですから……」

 突然腕に抱き着かれた俊君は、チャラい見た目に反してタジタジになりつつ言い返す。
 けれど、有香は納得しなかったみたいだ。


「でも離したってことは今は大丈夫なんでしょう? じゃあちょっとくらい良いじゃない」

「いや、ですから――」

「あ、大丈夫だよ」

 少しイラついた声音になった俊君の言葉を遮った。


 このままいつぞやのようにブリザード吹雪かせられたらたまらないからね。

「ちゃんと俊君の手の届く範囲にいるから、ちょっとそのままでいてあげて」

 そうお願いした。

「……離れないでくださいよ?」

 前科があるため胡散臭そうな目で見られたけれど、一応了承は得られる。


 本当ならこういう時のために浪岡君と二人体制なはずなんだけれど……。

 チラリと見た浪岡君は友人二人にがっちり両腕を掴まれていた。


 ある程度予想はしていたとはいえ……これじゃあ私の護衛どころじゃないよね。


 苦笑いしつつ、私は近くにある雑貨を物色し始めた。



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