【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 まさか忍野君にまで会うとは思わなくて驚いたけれど、その忍野君は私以上に驚いた表情をしていた。


「え? なんで? 香月、どうしてここにいるんだ?」

 驚きと、何か焦っているような様子。

 不思議ではあったけれど、とりあえず質問に答えた。


「何でって、延期してたお別れ会をしに。有香達に会いに来たんだよ?」

「嘘だろ……」

 何故か焦燥にかられたみたいな様子。

 無駄に不安を掻き立てられる感じがして私は眉を寄せた。


「なに? 来ちゃいけなかったわけ?」

「あ、いやその……今は来ない方が良かったんじゃねぇかなって……」

「今は?」

 今は来ない方が良いようなこと、何かあっただろうか?

 少なくと私は思いつかない。


 どういうことか聞こうと思ったら、忍野君は突然ハッと顔を上げる。

「もしかして、お前の妹も帰ってきてるのか?」

「え? うん、そうだけど?」

「嘘だろ⁉ マジかよ」

「え? ちょっ、忍野君⁉」

 嘘だろ、と呟きながら彼は挨拶もなしに去って行ってしまった。


「……何ですかあれ?」

「さあ?」

 俊君に聞かれたけれど、私だって分かるわけがない。


「何なんだろうね。……あ、そう言えば忍野君もみんなに飴あげなくなったんだよね。それも聖良がいなくなってからだと思ったけど」

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