【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 忍野君が去って行った方を一緒に見ながら有香が言った。


「へぇ……。でも私がいなくなってから飴あげなくなったってのは流石に偶然でしょ」

 どうでもよさそうなプチ情報に私は苦笑いで返す。

 雑貨屋で時間を潰しているうちにそれなりに時間が経ったらしい。

 友人二人に挟まれた浪岡君が「そろそろ行きましょうか」と言いに来た。


 浪岡君、両手に花状態だけど嬉しそうじゃないね。

 というか、むしろ怒ってる……?


「えっと、浪岡君。……何か怒ってる?」

 嫌なことでもあったんだろうかと聞いてみると、逆にそれが引き金になったみたいで笑顔で毒を吐き出した。


「え? 逆に怒っていないとでも? 護衛についてきたのに対象を守るどころか両腕を使えない状態にされていて……僕はちやほやされるために来たわけじゃないんですけどねぇ」

 ははは、と笑う浪岡君が怖い。


 流石に自分たちが怒らせていると分かった二人の友達は「ご、ごめんね~」と言いながら浪岡君から離れる。

 両腕が自由になった浪岡君はこれ見よがしに肩を回し“肩が凝った”アピールをし、ニッコリと笑って言った。


「じゃ、行きましょうか」
「う、うん」

 その笑顔に逆らう人は誰もいなかった。


 そうしてカラオケに行くと丁度愛良達と会う。

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