【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そこまで考えて、一つの可能性が思い浮かぶ。


 吸血鬼は催眠術を使うという事。
 有香の腕にあった見覚えのある(あと)

 信じたくない。

 でも、可能性としてはとてもあり得ることだ。


「有香……誰か、吸血鬼の人と会ったの? 腕の虫刺され――ううん、キスマークみたいな痕と関係ある?」

 今の状態の有香が答えてくれるかは分からなかったけれど、確認せずにはいられなかった。


 でも有香が何かを言う前に俊君が反応する。

「腕に痕? まさか⁉」

 そして彼が何か行動を起こす前に部屋のドアが勢いよく開かれた。

 ドアから知らない男の人達が四人くらい入って来たかと思うと、あっという間に俊君と浪岡君を友達ごと取り押さえる。

 何が起こったのか理解するよりも先に、聞き覚えのある声がその場に響いた。


「思ったより察しが良いんだなぁ? 聖良」

「っ!」

 来るだろうとは思いつつも、出来れば聞きたくなかった声。

 覚えたくなんてなかったその口調。


 ゆっくりと余裕の歩みで入ってきたのは、初めて私の血を吸った吸血鬼――岸永人だった。


「確かにあんたのお友達には催眠術も使ったけどな、思い通りに動かすにはそれだけじゃ足りねぇんだよ」

 近付いて来る岸に、わずかに体が震えた。

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