【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「ったく、本当にじゃじゃ馬だなぁ。ちったぁ大人しくしろよ……ここで犯されてぇのかぁ?」

「っ!」

 両腕を壁に押し付けられ、股の間に足を入れられる。

 さっきみたいに足を踏むことすら出来なくなった。


「とりあえずお前が誰のものなのか思い知らせてやるよ。……咬み痕も消えちまったしなぁ?」

 その言葉に、また血を吸われるのかと思った。

 でも――。

 岸がその唇で初めに触れたのは首ではなく唇。

 咬まれると思っていた私は、またもや抵抗する間もなく侵入されてしまった。


「んんぅ」

 吸われて(なぶ)られる激しいキスに、私はすぐ息が上がってしまう。

「ん、はっ!」

 顔を逸らそうとしても、させるものかという様に岸の唇が追ってくる。

 合間に見える怖いほどに真剣な目が、また私を真っ直ぐ射抜く。

 逃がすものかと、心の奥にまで直接侵入してくる。


「あ、んぅっ」

 嫌だと思っていても、息苦しさから頭が溶けていってしまったように感じた。


 拒絶の言葉も出せなくなると、今度はまた耳を甘噛みされる。

「ん、はぁっ」

 そのまま首筋を伝っていく柔らかい唇に、今度こそ本当に咬まれると思った。


 でもそれもまた予想を裏切られる。

 与えられた痛みは激痛ではなくて、チリッとした小さな痛み。

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