【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 このままじゃあ忍野君は負けるだろう。

 ただ単に負けるならともかく、ケガもしてしまうのは間違いない。

 何とか、何とかしないと!


 私は焦りを募らせながらも打開策を考えた。


 今のうちに離れて誰か助けを求めた方が良い?

 それとも、間に入って手助けした方が良いだろうか。


 後者はすぐに却下した。

 下手に入ってもケガをするだけで助けになんかなりそうにない。
 きっと邪魔になるだけだ。


 なら、助けを呼びに行くしかないだろう。


 この路地には人気がない。

 でも大通りに出れば流石に誰かはいるはずだ。


 仲間の吸血鬼がいてくれるかは分からないけれど、このまま何もしないよりは良いんじゃないかと思った。

「忍野君! 私、助け呼んでくるから!」

 黙って行ったら見捨てたみたいになってしまうから、聞こえるかどうかは分からないけれどとりあえずそう叫ぶ。

 でも、それを言って反応したのは岸の方だった。

「行かせるかよぉ! 女、聖良を止めておけ!」

 叫ぶように岸は有香に指示を出す。

「っ!」

 止められるわけにはいかない。

 幸い有香とは距離があったし、いくら岸の言いなり状態だとしても身体能力が上がったわけじゃない。


 大丈夫、逃げ切れる。


 そう思って走ったのに。

「聖良、待って!」

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