【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「聖良、俺は諦めねぇからなぁ? お前の首に散らした痕が俺の執着の証だ。覚えとけよ?」


 首?
 そう言えばいっぱいキスされてたような……?

 まさか!


 首に散らした痕というものが何か思い当たって、恥ずかしいやら悔しやら怒りたいやら。

 とにかく変な顔にはなっていただろう。


 でもそんな私の反応を見て満足したのか、岸は余裕の笑みを浮かべて「じゃあな」と姿を消した。

 そのすぐあと、もう一人誰かが近付いて来る足音が聞こえる。

 誰だろうと確認するより先に、嘉輪が声を上げた。

「正輝! 遅いよ」

「ごめん、でも今の嘉輪に追いつくのは……流石に無理だから」

 近くに来た正輝君が息を切らしながらそう言った。

 でも嘉輪はそんな正輝君に素早く指示を出す。


「正輝は聖良を守ってて。私はあいつを捕まえる!」

 そう言って今にも行ってしまいそうな嘉輪を私は(そで)を掴んで引き留めた。


「待って! あいつより愛良を助けて!」

 私を心配そうな目で見ながら連れ去られて行ってしまった愛良。

 私のところに他の護衛じゃなくて嘉輪が来たということは、他の護衛の人達は動けない状態なんじゃないだろうか。


 私より愛良を優先してるって可能性もあるけれど、助けに行っているか分からない護衛を当てには出来ない。


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