【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 岸は去っていった。

 私の危険は一先(ひとま)ず去ったと言っても良いだろう。

 それに正輝君が護衛としてついていてくれるならあとは大丈夫なはずだ。


 だから、嘉輪には愛良を助けに行ってほしい。

「愛良ちゃんのところには鏡が行ってるわ、少しなら時間を稼げる。その前にあいつを捕まえておいた方が今後の心配が少なくなると思うんだけど……聖良はどうしたい?」

 そう語る嘉輪には少しの焦りが(うかが)える。

 瑠希ちゃんの話のところで目が泳いだから、きっと瑠希ちゃんがもつかどうか不安があるんだろう。


 岸を捕まえて今後の(うれ)いを払いたいって気持ちもある。

 でも、愛良が危険だというなら選択肢は決まっていた。


「それでも愛良をお願い!」

 キッパリと言った私に嘉輪は諦めがついたみたいだ。

 一度フッと肩の力を抜いて、仕切りなおす。

「分かったわ。愛良ちゃんのところに行く」

 月明りの下、いつも以上に美しく見える嘉輪が強さを(たた)えた笑顔でそう言った。


 頼もしかったけれど、嘉輪一人に任せていいものかと不安にもなる。

 嘉輪は強いと聞いていたし、岸も戦わずして逃げ出すくらいなんだから心配はいらないのかもしれないけれど……。


「でも、嘉輪一人で大丈夫?」

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