【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「それは、本人からちゃんと説明してもらった方が良いだろうな」

 妖艶さを引っ込めて、先生の顔に戻る田神先生。

 視線が忍野君に集まった。


「あ、えっと……」

 はじめ戸惑って言葉が出てこなかった彼は、軽く深呼吸をして話し出す。


「まず、俺達忍野の人間は人に成りすまして生活していた。成りすますための方法を使えば、吸血衝動も起きないし人間の血を吸わなくても生きていける。それに吸血鬼としての気配も断てるから、本当に人間と変わりない生活が出来るんだ」

「そんな人達がいたとは知らなかったよ」

 相槌を打つ様に正輝君が口にする。


「でもそんな風に生活してても吸血鬼であることに変わりはない。だから、身近に勘付かれそうな吸血鬼やハンターがいると引っ越したりして逃げることもあったんだ」

 引っ越しって……そこまでしなきゃないの?

「俺も中学の時、同級生で友達になったやつが吸血鬼だって分かってさ……。そいつがこの学園に通えればあっちが転校してくれるから引っ越すことはなかったんだけど、なんか特殊な理由があるみたいであいつが転校するってことはなかった」

 だから自分が転校しなければならなくなった、と。

 悲しそうに、悔しそうに話した忍野君は次に私を見て罪悪感に耐えるような悲痛な表情をした。


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